第5回: 12球団一の強力投手陣

 開幕前、近鉄投手陣は12球団一の陣容を誇ると言われていました。

先発投手:高村、岡本、小池、香田、石毛、レフトウィッチ、酒井
中継ぎ投手:西川、柴田、盛田、入来
抑え投手:赤堀、大塚
補充要員:前川

 先発投手は余っており、また入来も先発可能な投手ということで、前川などファーム期待の先発投手が一軍で登板することはほとんど不可能という状況でした。開幕直前に赤堀が離脱しても、「先発で余っている酒井を後ろに回せばいい」という余裕ぶりでした。ところが、シーズン終了時の陣容は、ある程度信頼できる投手だけを挙げるなら以下のようになっていました。

先発投手:マットソン、赤堀、真木、岡本
中継ぎ投手:酒井、西川
抑え投手:大塚

 太字は開幕前と変わらない選手です。わずか3人しかいませんでした。酒井を除いてもなお6人いたはずの先発陣は、シーズン通して投げ続けた岡本に、先発転向した赤堀と2人の新人を加えた4人だけ。中継ぎ陣も、柴田と盛田が故障して、西川と酒井の2人だけ。抑え投手・大塚の活躍だけが救いでした。

 以下は今季の全先発投手の成績です。「幻の勝利」とは、後続投手に消されてしまった勝利投手の権利のことです(ただし同点走者が先発投手の残した走者である場合は除きます)。

投手名先発回数勝利敗戦幻の勝利その他
岡本晃2781126
高村祐2581403
小池秀郎167315
真木将樹166424
香田勲男153507
マットソン158601
レフトウィッチ83401
石毛博史40103
赤堀元之41111
シャウス30102
入来智11000
酒井弘樹10100
1354551633

 チームの最終成績が借金1なのに、先発投手が責任を負った試合では借金6、先発投手のふがいなさが浮かび上がります。「幻の勝利」6試合を加えれば5割に到達しますが、「幻の敗戦」も何試合かはあったことを考慮に入れればやはり借金を背負っていることになります。
 33試合の「その他」には、先発投手が5回以前に降板した試合や、6回以降に同点もしくは負けている状況で交代した試合が含まれていますが、この33試合と「幻の勝利」6試合を合わせた39試合のチーム成績は21勝16敗2分です。先発投手とは対照的な救援投手の踏ん張りがはっきりと見て取れるのです。
 先発投手陣のふがいなさを示す決定的なデータがあります。それは、今年の近鉄には二桁勝利投手が一人もいなかった、ということです。過去に二桁勝利投手が一人もいなかったチームは、パ・リーグでは次の7チームだけです。

1952年:近鉄パールス
1955年:トンボ・ユニオンズ
1980年:南海ホークス
1984年:日本ハム・ファイターズ
1990年:福岡ダイエー・ホークス
1992年:千葉ロッテ・マリーンズ
1994年:日本ハム・ファイターズ

 この7チームはすべて最下位に終わりました。二桁勝利投手が一人もいないのに最下位を逃れたチームは、セ・リーグを見ても過去2チームだけです。

1958年:広島カープ(借金14の5位、最下位とは4ゲーム差)
1994年:阪神タイガース(借金6の4位タイ、最下位とは1ゲーム差)

 ただし1994年の阪神のときには、最下位の横浜にも二桁勝利投手がいませんでした。いずれにしても、二桁勝利投手なしで上位に進出するのは難しいということは明らかだと思います。今年の近鉄は、救援投手陣の驚異的な活躍で終盤まで優勝争いを続けましたが、結局最後まで先発投手陣の調子は上がらず、それが優勝を逃す最大の原因になりました。また救援陣も、先発陣の不振で連投を余儀なくされて登板過多となった柴田、盛田が故障すると、残った投手たちにさらなる負担がかかり、8月下旬以降は接戦をことごとく落とすようになってしまいました。

 もうひとつ、リリーフする投手の起用法にも問題がありました。以下は今季の全救援投手の成績ですが、救援担当の投手と先発ローテーション投手(救援登板の前後に先発している投手)に分けてあります。

救援担当の投手
投手名救援回数勝利敗戦引分
西川慎一61010
酒井弘樹59600
大塚晶文49322
柴田佳主也39000
盛田幸妃32510
入来智24330
赤堀元之19210
レフトウィッチ11000
シャウス11010
西岡洋8000
マットソン7100
谷内聖樹7010
品田操士6000
香田勲男4000
石毛博史4000
真木将樹2000
小池秀郎1000
前川克彦1000
34520102

先発ローテーション投手
投手名救援回数勝利敗戦引分
岡本晃3020
真木将樹6020
香田勲男5100
マットソン1010
赤堀元之1010
16160

 もうおわかりでしょう。救援を専門に担当している投手たちは、責任を負った32試合に20勝10敗2分という驚異的な好成績を残しているのに対し、臨時にリリーフを任された先発ローテーション投手は1勝6敗とことごとく救援に失敗しています。これだけはっきりとした数字が出ているのだから、先発、中継ぎ、抑えの役割分担をしっかりと決めて、投手たちが監督に言われる前に自分の出番を予想して気持ちの準備をできるような投手起用を望みたいものです。

 最後に、近鉄投手陣の大きな問題を一つ指摘したいと思います。次の表は、最近4年間のパ・リーグ6球団のチーム与四球率(9回当たりの与四球数)です。

チーム与四球率(順位)
1995年1996年1997年1998年
西武2.87@3.67D3.50C3.29@
日本ハム3.93E3.19B3.62D3.47B
オリックス3.04A3.58C3.33B4.04D
福岡ダイエー3.42C3.06A3.23A3.87C
近鉄3.76D3.71E4.25E4.15E
千葉ロッテ3.06B2.86@3.20@3.34A
平均3.343.343.533.69

 優勝チームの与四球率は2位、4位、4位、1位、与四球率1位チームの成績は3位、5位、6位、1位ですから、与四球率がよければ順位が上がるというわけではありません。しかし近鉄は、1995、1996年とリーグ最低クラスの与四球率を残し、1997年からは他の追随を許さない圧倒的な数の四球を与え続けています。四球を出すなとは言いませんが、無駄な失点につながる四球はできるだけ減らしてほしいものです。


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