
「二人で100盗塁したい」。今シーズン開幕前、武藤と大村は確かにそう言っていました。次の表は、最近4年間の近鉄の主な選手(シーズン10盗塁以上)の盗塁数です。
| 選手名 | 盗塁数 | |||
| 1995年 | 1996年 | 1997年 | 1998年 | |
| 大村直之 | 15 | 5 | 15 | 23 |
| 内匠政博 | 12 | 6 | 1 | 2 |
| 大石大二郎 | 11 | 11 | 2 | - |
| ローズ | - | 11 | 22 | 15 |
| 武藤孝司 | - | 1 | 26 | 16 |
| 水口栄二 | 6 | 5 | 10 | 6 |
| チーム | 65 | 76 | 112 | 80 |
昨年は武藤と大村で41盗塁、ローズも加えれば63盗塁でした。しかし今年は二人で39盗塁、ローズを加えても54盗塁にしかなりません。「二人で100盗塁」は「チームで100盗塁」の間違いだったと言わざるをえない成績です(その「チームで100盗塁」すら達成できていませんが)。
次の表は、最近4年間の近鉄の主な選手(シーズン20犠打以上)の犠打数です。
| 選手名 | 犠打数 | |||
| 1995年 | 1996年 | 1997年 | 1998年 | |
| 大村直之 | 5 | 6 | 12 | 21 |
| 古久保健二 | 20 | 10 | 6 | 5 |
| 武藤孝司 | - | 1 | 29 | 38 |
| 水口栄二 | 5 | 32 | 42 | 26 |
| チーム | 83 | 105 | 141 | 149 |
年々、バントが増加してきていることが分かります。ちなみに1997、1998年はリーグ最多でした。
俊足の選手がいないのならともかく、「ドームに対応した野球」と称して大村、武藤など足の速い選手をそろえたのですから、バントばかりしないでもっと積極的に走ってほしいです。開幕直後に盗塁失敗が目立ったことがバント多用の原因のようですが、経験の少ない若い選手たちに失敗はつきものです。たとえ失敗しても、積極的に盗塁を仕掛けることで相手に与えるプレッシャーは大きな武器になります。バントを多用するということは、簡単に相手にワンアウトを与えることで、ビッグイニングのチャンスを自ら捨てているということです。バントは、足の遅い走者と打力の劣った打者(捕手など)の組み合わせの時か、どうしても1点がほしい終盤の場面だけにしてほしいです。
次に打線の中軸について見ていきたいと思います。かつて、投打に好選手をそろえて毎年のように優勝していたプロ野球チームがありました。そのチームの唯一の悩みは、五番打者にいい選手がいないということでした。今年の近鉄は、お世辞にも投打に好選手がそろっていたとは言い難いですが、とくに五番打者の人材不足が深刻でした。次の表は今年の近鉄の先発五番打者の成績です(打点率は1打数当たりの打点数)。
| 選手名 | 試合数 | 打数 | 安打 | 打点 | 打率 | 打点率 |
| ローズ | 43 | 162 | 35 | 17 | .216 | .105 |
| 安部理 | 28 | 85 | 25 | 6 | .294 | .071 |
| 山本和範 | 19 | 66 | 19 | 8 | .288 | .121 |
| 中村紀洋 | 18 | 59 | 14 | 8 | .237 | .136 |
| 鈴木貴久 | 17 | 60 | 13 | 8 | .217 | .133 |
| 大久保秀昭 | 4 | 8 | 2 | 1 | .250 | .125 |
| 礒部公一 | 3 | 11 | 4 | 4 | .364 | .364 |
| 大森剛 | 3 | 8 | 0 | 1 | .000 | .125 |
| チーム | 135 | 459 | 112 | 53 | .244 | .115 |
| 前半戦 | 77 | 246 | 56 | 28 | .228 | .114 |
| 後半戦 | 58 | 213 | 56 | 25 | .263 | .117 |
今年の近鉄のチーム打率は、リーグ3位の.267でした。ところが、クリーンアップの一角であるはずの五番打者の打率がそれをはるかに下回る.244、とくに前半戦は.228という惨状でした。また、四番に安打数リーグ3位、二塁打数リーグ1位の強打者・クラークを置いていたにもかかわらず、五番打者の打点はわずか53にとどまりました。チーム全体の打点率が.125なのに、五番打者の打点率は.115にしかならないのです。
この最大の原因は、本来なら一年を通してクリーンアップを打たなければならない中村とローズの不調です。前半戦は中村が、後半戦はローズが絶不調に陥り、打線のつながりを断ち切りました。また、前半戦やや不調だったとは言え、勝負強さには定評のあるベテラン・山本が骨折で2ヶ月間戦線を離脱したのも響きました。その他のわき役たちはよくやったと思います。安部はやや勝負弱いところもありましたが、4月半ばから8月末までコンスタントに安打を放ちましたし、鈴木も打率は.217と低調でしたが、チャンスではよく打っていました。人材不足で抜擢された3人も、大森は別として、大久保は初の一軍昇格とは思えないのびのびとした打撃を見せましたし、礒部にいたっては3試合で4安打4打点という驚異的な活躍ぶりでした。来年はローズ、クラーク、中村のクリーンアップ3人合わせて3割100本300打点を目指してほしいです。
最後に、代打の起用法について述べたいと思います。本来ならここでも数字を提示して意見を述べたいのですが、代打というのは単なる相手投手との対決ではなく、交代要員をにらんだベンチとベンチとの駆け引きでもあるので、数字だけであれこれと述べることは避けます。
野球界の常識の一つに「左投手と左打者の対戦は左投手に有利」というものがあります。しかし、だからといって左投手が出てきたら迷わず左打者を引っ込めて右打者を代打に送り、右投手が出てきたら待ってましたとばかりに左打者を出すのはどうかと思うのです。統計的には、左投手に対する左打者と右打者の打率の差はせいぜい.020〜.030くらいだと言われています。それならばそれほど左右にこだわらず、その投手から過去によく打っている打者やその日一番調子のいい打者を使った方が必ず好結果につながるのではないでしょうか。また、苦手だからといってそのたびに代えていてはいつまでたっても苦手を克服できませんから、特に将来を嘱望される若手選手には苦手克服のチャンスを与えるべきだと思います。
さらに付け加えると、統計的には有利なはずの左投手が「左打者には投げにくい」と言っているのを時々耳にします。要するに、左投手や左打者は右に比べて数が少ないので慣れていない、というだけのことではないのでしょうか。
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